昨今の小売業界においては、オンラインショップによる販売がますます勢いを増しています。消費者が指先1つでスマートフォンから商品を注文し、翌日にはそれが手元に届く便利な時代になったからです。
一方、実店舗での販売を行うショップにとっては、オンラインショップの存在が逆風となっています。特に新型コロナウイルスの感染拡大以降は、外出自粛が推奨されたことによって、ますます厳しい状況となりました。
今の時代に実店舗が生き残っていくためには、これまで以上に「行きたくなるお店」を作らなければなりません。そこで今回は、魅力的な店舗作りに欠かせない「VMD」の知識をご紹介します。
【目次】
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■VMDとは?
■VMDを実践する時のポイント
■購買行動の「AIDMA」を活用しよう
■坪効率を考えたVMDが重要
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■VMDとは?
VMDとは「Visual merchandising(ビジュアルマーチャンダイジング)」の略です。マーチャンダイジングは商品の「販売計画」で、顧客が求める商品を適切な「価格」「数量」「タイミング」の3点で提供する企業活動をいいます。つまりVMDは、「視覚的な訴求で、来店者の購買意欲を上げるマーケティング手法」のことなのです。
そしてVMDの考え方をもとに、商品を見やすく、わかりやすく、選びやすく、そして魅力的に見せることをMP(マーチャンダイズプレゼンテーション)といいます。MPには、以下の3つの要素があります。
【VP(ヴィジュアルプレゼンテーション)】
VPは、ショーウインドウや入り口近く、大型店のエスカレーター前ディスプレイなどに設置する「店舗の顔」のことです。店のブランドイメージやコンセプトを視覚的に表現します。主力商品、新商品などで見た人の興味をひき、店内へ誘導する役割があります。
【PP(ポイントプレゼンテーション)】
PPとは、店内のひときわ目立つ場所で訴求する、新商品や主力商品などの「推し商品のアピール」をするディスプレイのことです。柱まわりや壁面、顧客の目線にある棚などが対象となります。VPに誘導されて入店した顧客を、店内にとどまらせることを意識して設置します。
【(アイテムプレゼンテーション)】
IPは、PP近くの棚やハンガーラック、ケースなどに配置される「すぐに見られて、手に取れる」陳列のことです。アイテム・デザイン・サイズなどによって規則的に商品が分類されており、PPを見て関心を持った顧客を具体的な商品に誘導します。
このように、MPの3つの要素は一つの流れでつながっています。
1.VPによる「店舗の顔」作りで顧客を店内に誘導する
2.PPの「推し商品のアピール」でディスプレイや陳列棚前に顧客をとどまらせる
3.IPによる「すぐに見られて、手に取れる」陳列で、顧客の欲しい商品との出会いの確率を高め、購買意欲を高める
VPからPP、そしてIPへと顧客を自然な流れで商品に出会わせ、購買行動へと誘導していくのです。
■VMDを実践する時のポイント
VMDの意味を理解したら、さっそく実践していきましょう。とはいえ、やみくもに行っても独りよがりになりがちで、うまくいきません。VMDを効果的に実践するためにも、以下のポイントを押さえておきましょう。
・店舗のコンセプトを確認
どのようなお店にも、コンセプトやブランドイメージといったものがあります。店内の雰囲気がそれらのイメージとズレている場合、コンセプトが来店客に伝わらず、ターゲットとしたい客層が集まりません。店舗づくりをする前に、改めてコンセプトを確認しておきましょう。
・お客様の目線に立つ
実際に買い物をされるのはお客様なのですから、お店作りはお客様の目線に立って行う必要があります。しかし、VMDの理論を実践しようとするあまり、最も重要なお客様の存在を忘れてしまうことは少なくありません。お客様が回遊しやすいか、商品を手に取りやすいか……といったことを、常に意識しながら棚や商品を配置していきましょう。
・ディスプレイの基本を学ぶ
ディスプレイには、どのようなお店でも使える基本的なテクニックがあります。たとえば、商品に規則性を持たせて配置する、左右対称(シンメトリー)にする、逆に左右非対称(アシンメトリー)にする、高さの違う商品は正面から見て三角形に並べるなどです。これらは商品を見やすく、そして美しく配置できます。季節による商品や装飾の入れ替えも考慮しましょう。
・アフターコロナに対応
アフターコロナ・ウィズコロナの時代において、多くのお客様は実店舗から足が遠のきがちになっています。お客様に安心して来ていただくためには、アフターコロナに対応した店舗づくりをしなければなりません。
そこで、従来よりも棚や什器の間隔を空け、可能なら通路も広めにとりましょう。こうするとお客様同士の距離が空き、「3密」を開始しやすくなります。人気商品やレジの周辺が混み合わないよう、動線を分析し改良することも大切です。
また、店員のマスク着用や手指の消毒などに関する張り紙をすることも多いと思われますが、これらも店舗のイメージに合ったデザインにしましょう。さらに、花壇などの安らげるディスプレイを用意すれば、コロナ禍の暗い気分を払拭でき、多くのお客様に愛されるお店になるはずです。
■購買行動の「AIDMA」を活用しよう
前章で解説したポイントを実践するために役立つのが「AIDMA(アイドマ)」です。AIDMAとは、「Attention(注意)」「 Interest(関心)」「 Desire(欲求)」「 Memory(記憶)」「 Action(行動)」の頭文字を取った言葉で、お客様の購買行動=商品購入までのプロセスを5段階で説明したものです。ぜひ理解して、VMDの実践に活用しましょう。
1:Attention(注意)
外観のディスプレイやショーウインドウなどでお客様の注意を引き、売り場に気付いてもらう段階です。お客様は最初、お店の存在そのものを知らない状態であり、まずお店に気づいてもらわなければ購買には結びつきません。VMDの観点では、VPが重要となる場面です。
2:Interest(関心)
お客様にお店に気づいてもらった後、さらに商品に興味を持ってもらう段階です。なるべく多くの商品をみてもらい、商品への関心を高めることが目的となります。特にPPが重要になる場面なので、POPの使用やレイアウトの工夫によって推し商品をアピールしていきましょう。
3:Desire(欲求)
商品に関心を持ったお客様に、「買おう」と思っていただく段階です。実際に商品を手にとって見ていただくことで、お客様のニーズを喚起し、購買につなげます。見やすく手が届きやすい目線の高さに商品を陳列するなど、レイアウトを工夫しましょう。
4:Memory(記憶)
お客様に商品を強く印象づけ、記憶していただく段階です。お客様が「ほしい!」と強く感じたとしても、その場で購入に至るとは限りません。一旦保留してお店を出たお客様に、後日また「あれがほしい!」と思っていただくためには、商品を記憶に残す必要があります。POPや印象的なレイアウトによって、店内の風景ごと商品を記憶に焼き付けましょう。
5:Action(行動)
いよいよ実際に商品を購入していただく段階です。ここまで来れば、お客様の気持ちはほぼ固まっているので、店員のセールストークなどによって最後のひと押しをしましょう。ただし、いい加減なセールストークはかえって購買意欲を減退させるおそれがあります。最後までお客様の目線に立ち、丁寧な接客を心がけてください。
■坪効率を考えたVMDが重要
VMDを実践する上で重要になるのが「坪効率」です。忘れがちですが、商品を保管しているストックなどにも、売り場と同じだけの坪家賃がかかっています。しかし、これらの場所ではどうがんばっても売上を作れません。そのため、売り場では徹底的に坪効率を向上させて、売り場以外の坪家賃も賄えるだけの売上を確保する必要があります。
坪効率を向上させる最も基本的な方法は、「売れる商品を売れる場所に配置する」ことです。そこでまずは、自店舗をいくつかに区分けして坪効率を調べましょう。坪売上データや商品売上データなどを分析すれば、「売れる商品」と「売れる場所」がわかってきます。後はその2つを組み合わせつつ、VMDを考えればいいのです。
なお、分析の結果は既存の店舗内で実現できるのが1番ですが、店舗の構造などの問題で「どうしても理想的な配置にできない!」ということも多いでしょう。そのような時は店舗をリニューアルし、理想のVMDを実現できるお店にするのがおすすめです。もちろん、新規出店の際にもVMDの考え方は大いに役立つので、ぜひ活用してみてください。
お客様は商品購入の際、店員に押しつけられるのではなく「自分の意志で」購入を決定したいと思うものです。VMDは、お客様にプレッシャーを与えず自然に購買意欲を誘発させるために役立ちます。あくまでもお客様が「自分の意志で」商品を選べるように誘導し、満足できる商品との出会いの場を演出する。それがVMDの目指す店舗のあり方です。
タカネザワナイソウ工業では、店舗の企画から物件査定、市場調査、内装工事までをトータルサポートしています。出店に関する質問や困りごとがありましたら、弊社にお気軽にご相談ください。
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